2026年7月28日

便潜血が陽性でも、3割の人は精密検査を受けていません

2026年7月27日、講談社が作家・東野圭吾さんの訃報を発表しました。7月23日未明、大腸がんのため68歳で亡くなられたと報じられています。心よりお悔やみ申し上げます。
現時点では、病気が見つかった時期や詳しい経過は公表されていません。そのため、私たちが経緯を推測して語ることはできません。
一方で、大腸を専門に診療する立場から確実にお伝えできることがあります。
大腸がんは、日本人が最も多くかかるがんです
国立がん研究センターのがん統計によると、2023年に新たに大腸がんと診断された人は154,039人(男性85,208人、女性68,830人)。部位別では男女計で1位、つまり日本人が最も多くかかるがんです。
2024年に大腸がんで亡くなった人は54,416人(男性28,826人、女性25,590人)で、肺がんに次ぐ2位でした。
珍しい病気ではありません。むしろ、私たちにとって最も身近ながんです。
初期は、ほとんど何も起きません
大腸がんの症状としてよく挙げられるのは、血便、便が細くなる、下痢と便秘を繰り返す、残便感、貧血、体重が減る、といったものです。ただし、これらの多くはある程度進行してから現れます。早期の大腸がんは、自覚症状がほぼありません。
「気になる症状が出たら受診しよう」という考え方は、大腸がんに関しては後手に回ります。症状は、病気を見つけるための合図としては遅すぎるのです。
一方で、血便や便通の変化があれば必ず大腸がん、というわけでもありません。痔、過敏性腸症候群、大腸憩室炎、炎症性腸疾患など、原因はさまざまです。だからこそ、症状の有無で自己判断せず、調べる必要があります。
そして、見つかった時期の違いは、その後の負担の違いに直結します。早期で見つかれば、大腸カメラで切除し、それだけで治療が終わることもあります。進行してから見つかれば、手術や薬物療法が必要になります。同じ病名でも、そこから先に通る道はまったく違います。
いちばん多い取りこぼしは、便潜血陽性の放置です
自治体や職場の大腸がん検診では、便潜血検査を行います。40歳以上の方が年に1回受ける、便に混じった目に見えない血液を調べる検査です。葛飾区にお住まいの40歳以上の方は、区の大腸がん検診を500円で受けられます。
この検査には、はっきりした効果があります。年に1回受け続けることで、大腸がんによる死亡は33%減るとされています(2年に1回でも13〜21%)。受ける価値のある検査です。
問題はその先にあります。国立がん研究センターの集計では、大腸がん検診で「要精密検査」となった人のうち、実際に精密検査を受けたのは71.5%(令和5年度・全国値)。およそ3割の人が、陽性を指摘されたまま次の一歩を踏み出していません。
陽性と言われた方のうち、実際に大腸がんが見つかるのは1〜2%です。ほとんどの人は、調べてみれば何もありません。ただ、検診とはその1〜2%を拾い上げるための仕組みです。「たいていは何もない」は、自分が調べなくていい理由にはなりません。便潜血検査で陽性と判定された場合は、精密検査として大腸カメラ(大腸内視鏡検査)が推奨されています。
「痔があるから」で自分を納得させないでください
「痔があるので、血が出るのは当たり前だと思っていた」——消化器の外来で、珍しくない言葉です。
実際には、便潜血陽性の原因が痔など肛門からの出血であるケースは少なくありません。しかし、痔があることは、大腸にがんが無いことの証明にはなりません。痔と大腸がんは同時に存在し得ます。むしろ、痔があるために出血に慣れてしまい、受診が遅れる方がいます。
判断材料になるのは、症状ではなく、実際に大腸の中を見た結果だけです。
では陰性なら安心かというと、そうとも言い切れません
便潜血検査が拾えるのは、出血しているがんやポリープだけです。出血していない病変では陰性になることがあります。そのため、便潜血検査だけでは早期大腸がんの一部や、進行がんでも一部は見つからないことがあります。
つまり便潜血検査は、「陽性なら必ず次へ進んでほしい検査」であって、「陰性なら大腸に何も無いと保証してくれる検査」ではありません。ここを取り違えている方がとても多いと感じます。
だからこそ当院では、近年若い世代の大腸がんも増えていることなどを踏まえ、35歳を過ぎたら一度は大腸カメラを受けることをおすすめしています。毎年受ける必要はありません。一度、自分の大腸の中を確認しておく。それだけで、その後の検診結果の受け止め方が変わります。
大腸カメラは、調べることと治すことが同時にできます

大腸カメラの大きな特徴は、その場でポリープを切除できることです。当院では日帰りでの大腸ポリープ切除術に対応しています。入院の必要はありません。
大腸がんの多くは、腺腫と呼ばれるポリープから時間をかけて育ちます。検査中にそのポリープを見つけて取ってしまえば、がんになる前に断つことができます。「調べる」と「治す」が一度に済む検査は、そう多くありません。
ただし、切除して終わりではありません。ポリープができた大腸は、また別のポリープができやすい大腸でもあります。切除後にいつ次の検査を受けるかまで含めて、はじめて大腸がん対策になります。
次に当てはまる方は、便潜血検査ではなく大腸カメラをご検討ください。
- 便潜血検査で陽性(要精密検査)を指摘された
- 血便が出た、便に血が付く
- 便通の変化が続いている
- 家族に大腸がんになった方がいる
- 過去に大腸ポリープを指摘された
- 35歳を過ぎて、一度も大腸カメラを受けたことがない
当院の大腸カメラについて

当院では鎮静剤(静脈麻酔)を使い、ウトウトしている間に検査を行います。検査時間は10〜30分程度です。ポリープが見つかれば、その場で日帰り切除まで対応します。保険適用の検査です。
早朝の検査や土日の検査、胃カメラと大腸カメラの同日検査にも対応しています。女性医師による検査をご希望の方は金曜日にご案内できます。
正直に申し上げると、検査に向けた準備は楽ではありません。通常は約2リットルの下剤を飲んでいただきます。当院では、これが難しい方のために、胃カメラから下剤を直接注入する方法や、鼻から細いチューブで注入する方法もご用意しています(内容により自費・実費が必要です)。
それでも、下剤に費やす数時間で、その後何年もの安心につながる可能性があります。なお、一度受けて問題がなければ、次はしばらく先で構いません。毎年受け続ける類の検査ではない、という点も知っておいていただきたいところです。次回の目安は所見によって変わるため、検査後に医師からお伝えします。
検査前の診察はオンライン診療でも受けられます。ご来院は検査当日のみ、という形も可能です。まずはご相談ください。
検診の紙を、引き出しにしまったままにしないでください
「要精密検査」と書かれた通知を受け取ったまま、時間が経ってしまっている方。健診の封筒を開けていない方。35歳を過ぎて一度も大腸カメラを受けていない方。今日それを探すところ、調べるところから始めてください。大腸カメラは、ご自身の将来の安心につながる検査です。
早朝土日の検査にも対応しており、お忙しい方でも受診していただけます。
ご予約は24時間WEB予約・LINE予約も承っております。
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