
いぼ痔
いぼ痔
いぼ痔(いぼじ)は、肛門の内側にできる痔の一種です。痔は、肛門の周囲にある血管が拡張し、腫れ上がった状態を指します。いぼ痔は、これらの血管が内側に突出してできるもので、特に便通時に痛みを伴うことが多いです。
いぼ痔の主な原因は、便秘や下痢、長時間の座りっぱなし、重いものを持ち上げる際の力みなど、肛門に過度な圧力がかかることです。また、妊娠中や出産時の力み、加齢による筋肉の弱化も、いぼ痔のリスクを高める要因となります。
この症状は、特に中高年の方に多く見られるもので、生活習慣や食生活の乱れが影響していると考えられます。早期の段階での適切な治療や生活習慣の見直しにより、進行を防ぐことが可能です。
いぼ痔は、その名の通り、いぼのような突起が肛門内部にできる症状です。以下は、いぼ痔の主な症状になります。
初期の症状
進行した場合の症状
いぼ痔の症状は、進行すると日常生活にも影響を及ぼすことがあります。特に、便通時の痛みや出血は、放置すると悪化する可能性があるため、早期の診断と治療が推奨されます。
いぼ痔の診断は、主に肛門の視診や触診によって行われます。しかし、より詳しい状態を知るための検査方法も存在します。
一般的な検査方法
内視鏡検査
内視鏡検査は、肛門や直腸の内部を詳しく視覚的に確認することができる方法です。カメラを取り付けた細長い管を肛門に挿入し、内部の状態をモニターで確認します。この検査により、いぼ痔の位置や大きさ、他の疾患の有無などを詳しく知ることができます。
いぼ痔の治療方法は、症状の重さや進行度によって異なります。以下は、主な治療方法になります。
一般的な検査方法
内視鏡検査
より正確にいぼ痔の位置や大きさを確認しながら治療を行うことができます。これにより、治療の成功率が上がるとともに、再発のリスクも低減します。
いぼ痔の発症や再発を防ぐための予防方法は、日常生活の中での注意点が中心となります。
切れ痔(きれじ)は、肛門の内側にある粘膜が裂けてしまうことで起こる症状の一つです。この裂け目は、便通時の過度な圧力や便秘、下痢などの原因で生じることが多いです。裂け目が生じると、便通時に鋭い痛みを伴うことが特徴的です。
切れ痔の主な原因としては、便秘や下痢、過度な力を使っての排便、妊娠や出産、肛門周辺の炎症や感染などが考えられます。特に、便秘が続くと硬い便が通ることで粘膜にダメージを与え、裂け目を生じやすくなります。
また、肛門は非常にデリケートな部位であり、日常生活の中での小さな刺激やトラウマも切れ痔の原因となることがあります。そのため、日常生活の中でのケアが非常に重要となります。
切れ痔の症状は、その程度や進行具合によって異なりますが、以下のような特徴的な症状が挙げられます。
鋭い痛み
排便時やその後に鋭い痛みを感じることが一般的です。特に硬い便を排出する際に痛みが強くなることがあります。
出血
便と一緒に鮮やかな赤い血が出ることがあります。血は便の表面やトイレットペーパーに付着していることが多いです。
かゆみ
肛門周辺にかゆみを感じることがあります。これは、裂け目から分泌される液体が皮膚を刺激するためです。
腫れ
重度の切れ痔の場合、肛門周辺が腫れてきます。これは、炎症や感染が進行しているサインとなります。
これらの症状が現れた場合、早めの診察と適切な治療が必要です。特に、痛みや出血が続く場合は、専門の医師の診察を受けることをおすすめします。
切れ痔の診断は、主に患者様の症状や肛門の視診によって行われます。以下は、切れ痔の診断に用いられる主な検査方法です。
視診
医師が肛門を直接観察し、裂け目や炎症の有無を確認します。初期段階の切れ痔は、この方法で診断されることが多いです。
触診
指を用いて肛門内を触診し、裂け目の位置や深さ、硬さを確認します。
内視鏡検査
内視鏡検査を使用して、肛門や直腸の内部を詳しく観察します。これにより、裂け目の他にもポリープや腫瘍などの異常を早期に発見することができます。
これらの検査を組み合わせることで、切れ痔の診断だけでなく、他の肛門疾患の有無も確認することができます。特に、症状が重い場合や、症状が改善しない場合は、内視鏡検査を行うことで、より正確な診断が可能となります。
切れ痔の治療は、症状の程度や原因によって異なります。以下は、一般的な治療方法の概要です。
保存的治療
初期段階の切れ痔には、軟膏や座薬を使用して症状を和らげる方法が選択されます。また、便秘の改善や食生活の見直しも重要です。
外科的治療
症状が重い場合や、保存的治療での改善が見られない場合には、外科的な治療が必要となることがあります。裂け目の部分を切除することで、痛みや出血を止めることができます。
内視鏡検査
内視鏡を使用して、裂け目の部分を詳しく観察しながら治療を行います。これにより、より正確で効果的な治療が可能となります。
切れ痔の治療には、早期の診断と適切な治療が非常に重要です。症状が軽いうちに専門の医師に相談することで、より早く症状を改善することができます。
切れ痔を予防するためには、日常生活の中での注意点やケアが非常に重要です。以下は、切れ痔の予防方法の一部です。
食生活の見直し
便秘を予防するために、食物繊維を豊富に含む食品の摂取を心がけましょう。また、水分を十分に摂取することも大切です。
適切な排便の仕方
無理に便を出そうとすると、肛門に過度な圧力がかかり、切れ痔の原因となることがあります。自然に便意が来たときに、ゆっくりと排便することを心がけましょう。
肛門を清潔に保つ
肛門周辺を清潔に保つことで、炎症や感染を予防することができます。トイレ後は、やさしく拭くことをおすすめします。
定期的な健診
得意とする内視鏡検査を定期的に受けることで、切れ痔だけでなく、他の肛門疾患の早期発見・早期治療が可能となります。
これらの予防方法を日常生活の中で実践することで、切れ痔のリスクを低減することができます。
痔ろう(あな痔)は、直腸と肛門周囲の皮膚をつなぐ「ろう管」というトンネルができる痔のことです。肛門周囲に膿がたまる「肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)」が進み、慢性化すると痔ろうになります。
痔ろうの主な原因は、下痢などによって肛門の組織に細菌が入り込むこととされています。歯状線には、「肛門陰窩(こうもんいんか)」と呼ばれる上向きのポケットがあり、粘液を出す「肛門腺」と呼ばれる腺があります。小さなくぼみなので、通常はここに便が入り込むことはありませんが、下痢をしていると、便が入りやすくなり、肛門腺に大腸菌などの細菌が入り込むことがあります。この肛門腺に大腸菌が入った際に、付近に傷があったり、体の抵抗力が弱っていたりしていると、感染を起こして化膿し、肛門周囲膿瘍になります。さらに肛門周囲膿瘍が進行し、肛門の内外をつなぐトンネルができると、痔ろうとなります。
肛門周囲膿瘍
お尻の腫れが徐々に大きくなっていき、激しい痛みを伴います。また、38度を超える発熱が続く場合もあります。
単純痔ろう
痔ろうの約7~8割がこのタイプで、内括約筋と外括約筋の間を「ろう管」が延びています。
複雑痔ろう
皮膚への出口が複数あったり、外肛門括約筋の外側などに「ろう管」がこえて延びるもので、肛門の後方を複雑に走行するタイプです。
視診、触診、肛門指診
痔ろうの診断では、まず視診(目で見て)、触診(触れて)、肛門指診(肛門に指を入れて診察する)を行います。なかでも指診は得られる情報が多く大切な検査です。肛門周囲膿瘍の場合、肛門指診は痛みを伴う可能性があります。
肛門鏡検査
肛門に短い筒を入れて、より詳細に観察を行います。
経肛門的超音波検査
肛門から超音波のプローブを挿入して検査します。痔ろうの部位や広がりなどを評価することができます。
CT、MRI
最近ではCT、MRIなどの画像診断による補助診断が有効だとされてきています。画像の解析能力の向上により、細かな変化もみることができ痔ろうの正確な位置やタイプを知ることができます。
一回の肛門周囲膿瘍で切開排膿をして膿を出すだけで痔ろうに進展するというケースは少なく、排膿だけで治ってしまい繰り返さないのであれば、それ以上の治療(手術治療)は必要ありません。
しかし、痔ろうの状態となって肛門周囲膿瘍を繰り返す場合には、外科的治療が検討されます。活動性のある痔ろうを長年にわたって放置しておくことで、まれではありますが、痔ろうがんが発生したり、痔ろうが多発したり肛門が狭窄(狭くなること)したりする場合には、治療を必要とします。
痔ろう治療の基本は外科的な手術治療です。痔ろうはろう管から膿がでるのが痔ろうですが、その位置やタイプにはさまざまなバリエーションがあります。そのため、手術の術式も多種類があり、ケースごとに術式が選択されます。以下に代表的ないくつかの手術の方法を示します。
①切開排膿術
局所麻酔で腫れている部分を切開し、たまっている膿を排出します。日帰り手術が可能ですが、深部膿瘍(おしりの深い部分に膿瘍ができた場合)は腰椎麻酔が必要な場合もあります。皮膚の毛穴から細菌感染して形成された肛門周囲膿瘍は切開のみで治癒しますが、痔ろうの場合、切開して約4割程度が「ろう管」を形成し根治手術が必要になります。
①切開開放術
「ろう管」を切開し、縫合せずに瘻管を開放させるので、lay open法ともいいます。括約筋を切除しても肛門機能に問題が起こらない肛門後方部の単純痔ろうに向いた手法で、再発はほとんどみられません。
②括約筋温存手術
括約筋を切断せずに、なるべく他の組織を傷つけないように「ろう管」のみを切除する方法で、くりぬき法(coring out法)ともいわれていますが、手術の難易度が高くなる場合もあり、再発が問題になります。充分な肛門の弛緩が必要なので、腰椎麻酔による入院治療が必要です。
③シートン法
肛門機能の温存効果が高い手法です。瘻管の原発口である肛門陰窩からゴムや紐状の医療器具を入れて皮膚に開いた穴まで通し、縛ることで徐々に切開と治癒を進ませてダメージを最小限に抑えます。ただし、平均して数カ月程度の治療期間が必要になり、その間何度か通院して締め直す必要があります。瘻管の状態によって治療期間はかなり異なってきます。また、締め直す際には違和感や痛みを生じる可能性があります。
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