
萎縮性胃炎・慢性胃炎
萎縮性胃炎・慢性胃炎
萎縮性胃炎・慢性胃炎は、胃の粘膜が炎症を起こし、その結果、胃の粘膜が萎縮してしまう病気です。この病気の主な原因として、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が挙げられます。ピロリ菌は、胃の粘膜に定着し、炎症を引き起こすことで、胃の健康を害します。
胃は、食物を消化するための重要な器官であり、その内部には多くの胃酸が分泌されています。ピロリ菌は、この強い胃酸の中でも生き残ることができる数少ない細菌の一つです。この菌が胃の粘膜に感染すると、胃の自然な防御機能が低下し、炎症や潰瘍を引き起こすことがあります。
長期間の感染により、胃の粘膜が徐々に萎縮していき、胃酸の分泌が低下することが知られています。これにより、食物の消化がうまく行われなくなることがあり、さまざまな症状が現れることがあります。
萎縮性胃炎・慢性胃炎は、初期段階では特に症状が現れないことが多いです。しかし、病気が進行すると以下のような症状が現れることがあります。
胃痛
胃の中央や上部に痛みを感じることがあります。食事の後や空腹時に痛みが強くなることも。
胃もたれ
食事の後、胃が重たく感じること。特に、油っこい食事や大量の食事後に症状が現れやすい。
吐き気や嘔吐
特に朝方に吐き気を感じることがあります。
食欲不振
食事の量が減少し、体重が減少することも。
貧血
胃の粘膜が萎縮することで、胃酸の分泌が低下し、鉄分の吸収が悪くなることが原因で貧血が起こることがあります。
これらの症状が現れた場合、早めの診察と治療が推奨されます。特に、ピロリ菌の感染が疑われる場合、適切な検査と治療が必要となります。
萎縮性胃炎・慢性胃炎の診断には、いくつかの検査方法がありますが、最も確実な方法は内視鏡検査です。
内視鏡検査
内視鏡は、細長い管の先にカメラがついた器具で、口から胃の中に挿入して胃の内部を直接観察します。
血液検査
ピロリ菌の感染を調べるための血液検査もあります。血液中の抗体の量を測定することで、感染の有無や感染の程度を判断します。
呼気検査
ピロリ菌が体内で尿素を分解する性質を利用した検査方法です。尿素を含む特別な液体を飲んだ後、呼気中の二酸化炭素の量を測定することで、ピロリ菌の感染を確認します。
萎縮性胃炎・慢性胃炎の治療は、原因となるピロリ菌の除菌が中心となります。
抗生物質
ピロリ菌の除菌には、複数の抗生物質を組み合わせた治療が一般的です。アモキシシリンやクラリスロマイシンなどの抗生物質が使用されます。
酸分泌抑制薬
胃酸の分泌を抑えることで、胃の粘膜の回復を促進します。プロトンポンプ阻害薬(PPI)やヒスタミンH2受容体拮抗薬が使用されることがあります。
食事
辛い食物や油っこい食物、カフェインを多く含む飲み物など、胃に負担をかける食事は控えるようにします。
禁煙・節酒
タバコやアルコールは胃の粘膜にダメージを与えるため、控えることが推奨されます。
定期的な健診
症状がなくても、定期的な健診を受けることで、早期発見・早期治療が可能となります。
萎縮性胃炎・慢性胃炎の予防は、日常生活の中での注意点や生活習慣の改善が鍵となります。
バランスの良い食事
ビタミンやミネラルを豊富に含む野菜や果物を多く摂取することで、胃の健康を保つことができます。
適量の摂取
過度な食事は胃に負担をかけるため、食事の量を適切に調整することが重要です。
禁煙
タバコは胃の粘膜を傷つける成分を含んでいるため、禁煙することで胃の健康を保つことができます。
節酒
アルコールも胃に負担をかけるため、適量を守ることが推奨されます。
ピロリ菌感染および萎縮性胃炎・慢性胃炎と胃がんの関係については、さまざまな報告があります。そのひとつとして、日本では毎年ピロリ菌陽性者の0.5%が胃がんを発症するというデータがあります。また、ピロリ菌に現在感染している人は未感染の人に比べて、胃がんの発症リスクが日本では15倍以上、海外では20倍以上というデータもあります。これはあくまで統計学上の数値であり、実際にはこれよりも胃がんのリスクは高いと言われています。
萎縮性胃炎・慢性胃炎については、萎縮が高度になるにつれて胃がんのリスクが上がると言われています。全く萎縮のない人では0.04%、最も高度な萎縮のある人では5.33%に胃がんが見つかったため、単純に計算すると最も高度な萎縮がある人は萎縮がない人に比べて、130倍以上も胃がんの確率が高いとも言えます。
胃粘膜の菲薄化(うすくなること)によって大弯ひだの消失や、血管透見(血管が透けてみえること)を認めます。ピロリ菌がいる胃炎を意味し、胃がんのリスクが高い状態です。萎縮は胃の奥の前庭部から徐々に胃の上部に進行していき、その進行度合いによる分類が木村・竹本分類です。
萎縮境界が胃体部小彎側で噴門を超えない閉鎖型closed type(C1-C3)とそれを超えて大彎側にも進展する開放型open type(O1-O3)に分類されます。
人間ドックで発見された胃がんの検討では、内視鏡的な萎縮の範囲がC-0、C-1では胃がんの頻度は0%、C-2、C3で2.2%、O-1、O-2で4.4%、O-3で10.3%と報告されており、萎縮の進展とともに胃がんリスクが高くなります。
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