
ピロリ菌
ピロリ菌
正式にはヘリコバクター・ピロリと呼ばれる細菌で、らせん状の形状をしています。通常胃のなかにいる菌は胃酸で死んでしまいますが、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を発生するので、生き延びることができます。
ピロリ菌は基本的に口から感染するといわれています。また、感染は衛生環境と関連するため、以前に比べると現在は感染する機会は減ってきていると考えられています。日本人のピロリ菌の感染者はおよそ50歳以上の人で感染している割合が高いとされています。
ピロリ菌に感染すると胃に炎症を起こします。胃・十二指腸潰瘍の患者様の約90%は、ピロリ菌が原因で胃・十二指腸潰瘍になっています。ピロリ菌を除菌すると胃・十二指腸潰瘍の再発率は著しく下がります。また、胃がんとの関連も指摘されています。
ピロリ菌に感染していると、胃粘膜が傷つけられ持続的な炎症を起こす慢性胃炎の状態が生じます。この状態が長く続くことで次第に胃粘膜の萎縮(萎縮性胃炎)が進み、胃酸の分泌機能や胃の運動機能が低下して、消化不良、胃の不快感(胃もたれ・吐き気)、食欲不振などの症状がみられるようになります。こうして胃粘膜がもろくなると、胃潰瘍や十二指腸潰瘍が発症しやすくなり、胃がんの発生リスクも高まってきます。これらの疾患のピロリ菌の感染率は、慢性萎縮性胃炎でほぼ100%であり、胃潰瘍で70~90%、十二指腸潰瘍では90~95%と考えられています。また、ピロリ菌に感染している人は、未感染の人に比べ胃がんリスクが5倍になるという報告もあります。
ピロリ菌の感染から年月が経過し、炎症が継続している期間が長い人ほどがんの発症リスクが高くなるといわれていますので、なるべく感染初期の若いうちにピロリ菌を調べ、早期に除菌治療をすることが胃がん予防において有効です。
そのほかピロリ菌は、胃ポリープ、胃MALTリンパ腫、血小板減少性紫斑病との関連性も指摘されています。
ピロリ菌の有無を調べる検査には、大きく分けて胃内視鏡を使う方法と使わない方法があります。これらの検査を複数行い、全てで陰性であったものをヘリコバクターピロリ菌「陰性」、1つでも陽性となったものを「陽性」と判定します。
迅速ウレアーゼ試験
胃の組織を採取して、ピロリ菌が作り出すアンモニアによる反応を試薬で調べます。
鏡検法
採取した組織を染色して、顕微鏡でピロリ菌の存在を確認します。
培養法
採取した組織を培養して、ピロリ菌が増えるかどうかを見て判定します。
尿素呼気試験
検査用のお薬を飲んでいただき、一定時間経過した後の息(呼気)にピロリ菌の反応が出るかを調べます。身体の負担が少なく、簡単で感度も高い検査です。
血液、尿検査(抗体反応)
ピロリ菌に感染していると体の中に抗体ができます。血液や尿を採取してこの抗体の有無を調べます。
便中抗原検査
便中のピロリ菌の抗原を調べます。身体への負担がなく、お子様でも受けやすい検査です。
医師の診断
下記の疾患を除菌治療の対象とし、胃内視鏡検査でピロリ菌が棲んでいそうな胃粘膜と診断した場合は、ピロリ菌検査によって確定診断を行います。
除菌治療の対象となる疾患
1次除菌治療
1次除菌後の判定検査
1次除菌後、8週間以上の日数を空けて再度ピロリ菌検査を行い除菌が成功したかを判定します。
2次除菌治療
3割負担 | 1割負担 | |
---|---|---|
迅速ウレアーゼ試験 | 1,560円 | 520円 |
鏡検法 | 4,020円 | 1,340円 |
培養法 | 1,800円 | 600円 |
別途、胃カメラの費用が3割負担4,500円、1割負担1500円かかります。
3割負担 | 1割負担 | |
---|---|---|
尿素呼気試験 | 1,560円 | 520円 |
抗体検査(血液・尿検査) | 690円 | 230円 |
便中抗原検査 | 900円 | 300円 |
3割負担 | 1割負担 | |
---|---|---|
1次除菌(胃薬1種類、抗生物質2種類) 1日2回 7日間 |
1,560円 | 520円 |
2次除菌(胃薬1種類、抗生物質2種類) 1日2回 7日間 |
1,440円 | 480円 |
3次除菌以降 | 自費診療となります。 |
大多数の方は、何ごともなく除菌治療を終えますが、副作用として軟便や下痢が報告されています。また、頻度は高くありませんが、味覚異常、肝臓の数値の異常などもあります。注意していただきたい副作用は、発熱を伴う下痢や血便、じんましんなどです。これらは極まれに出現することがあり、放っておくと悪化する可能性があるため、このような症状が出た場合は速やかにご来院ください。
ピロリ菌の感染と胃がん発症は大きく関係しているため、ピロリ菌の除菌治療を行うことで、胃がんの発症リスクを軽減することが可能です。ただし、除菌治療を行っても胃がんのリスクがゼロになったわけではありません。除菌後の方は胃粘膜の萎縮が残るため、もともとピロリ菌がいない方に比べると、胃がんの発生頻度が高いことがわかっています。また、胃がんの原因はピロリ菌だけでなく、塩分の過剰摂取や喫煙、食生活とも密接に関連しているといわれています。ピロリ菌が陰性であっても、胃がんを早期の段階で見つけるためには、1年に1回の定期的な胃内視鏡検査が重要です。
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